★死にゆく妻との旅路

なんとなく見たいなぁと思っていて、
でも見る機会に恵まれなさそうだったけれど、
上映終了間際に運よく見ることが出来た作品。

こういう言い方は不謹慎に値するのかわからないけれど、
こういう男女の関係は羨ましく感じる。

しかしその羨ましさは自分ではなく他人だからそう思えるところがある。
テレビドラマでよくある三角関係の恋模様で、
上手く立ち振る舞うプレイボーイに憧れるのと似ている。

なんていうとどこからか批判がきそうだけど、
別に私は悪い意味でいっているわけではない。

私と少し状況が似ているところもある。
といっても何千万もの負債があるわけではない。
私も妻も癌にかかっていない。

映画では11歳年下の妻。
私の妻は10歳弱年下。

映画の中では「おっさん」と呼ばれている。
私は「おじさん」と呼ばれた。(結婚前まで)

それからアイスクリーム。

女性はどうしてアイスクリームが好きなんだろう。
妻もアイスクリームは大好きである。
アイスクリームを食べる妻は、
なんとも子どもみたいな顔をするのである。
(のろけではありません)
しかもアイスクリームだけは食べるのが早い。

さて映画の話から離れてしまったので戻そうと思う。
まず主演の三浦友和と石田ゆり子はベストキャストだった。

映画の成否は100%監督のせいでかつ100%俳優のせいであると思う。
つまりどちらか一方だけが悪いということはありえないのである。

実話であるというこの映画の主人公の行動がいいか悪いかといえば良くはないと思う。
癌なのに車で連れまわすのが悪いというのではなく、まず逃げたことが悪い。
映画でお姉さんに進められたように自己破産すべきだった。

でも「格好悪い」という理由だけで自己破産しないのである。
しかも逃げ方も悪い。
本人はどう思っているのかわからないが
それも相当格好悪いのに。

逃げる事が悪いのは誰でも知っているし、
その逃げたい気持ちも分かる。
体裁を気にすることもわかる。
いざとなれば誰だって逃げたいのである。

ただ主人公はあまり自己責任を感じなさすぎで、
負債を負ったのも仕事がないのも、オレのせいじゃないという雰囲気がある。
職探しという理由で一時期は妻を置いて3ヶ月も行方をくらましていたのも、
どこかお気楽な感じなのである。
勿論本人としてはお気楽とは思っていないだろうけど、
どこか他人のせいにして気楽になっているように見えてしまう。
しかもその3ヶ月の間に浮気相手のアジア系の女性のところにも行っている。
しかもお金も用立ててもらっているようだ。
(映画ではそういうやりとりはないのだが、あなたのためにAV女優になるとかいってたから)

平たく言えば弱さというものだろう。
それを三浦友和は上手く表現している。

更に悪いのは
逃げだしたのも妻の「好きなようにしたらええ」という言葉からだし、
病院に行かないのも妻の「病院はいやや」という希望からだ。
つまり逃げたのも病院に行かないのも彼にとっては妻のせいなのだ。
表面的にはそんなことはないけれど、心のどこかに片隅にそんな気持ちが
終始あったのだろうと思う。

それに気づいたのは妻が死んでからだと思う。
妻を失って初めて本気に向かい合ったのだ。
妻の希望を叶えてるつもりが、実は自分の希望を叶えているだけだと。

それを三浦友和は上手く表現している。

妻役の石田ゆり子はというと、元々そういう儚さを演じさせたら、
右に出るものはいないだろうという役者である。

元気な頃にはアイスをよく食べるが、
病状が悪化し食欲がなくなり、
でもアイスクリーム買ってきたという言葉に、
好物ということで脳が反応し食べさせてもらうが
ほんの一口食べてやはり吐いてしまう。

この映画のそのシーンが私は好きだ。
さすが石田ゆり子である。
何回もそのシーンが見たくなる映画はなかなかない。

ラストシーンの近くでは、
初めての出会いの時、
好きな食べ物を聞かれ「アイスクリーム」と答える場面をはさむ。
こういう演出をベタというかもしれないが、
ベタを最高にさせてしまうのが、この映画のすごいところである。

妻が死んで恐らく警察へ行ったのだろう。
(自首したのか職務質問で引っ張られたのかわからないけど)
妻が死んで逃げることを止めたのである。

勿論逃げる理由がなくなったからだ。
理由を人任せにしていたからだ。

私が微妙に主人公に対して
批判的に書いているように見えるかもしれないがそうでなく、
こういう行動は自分の中にもあるから、
そういう意味で共感はしているけれど、
それは大きな声では言えることではなく、
密かに思うだけに留めたいと思うし、
この映画はそういうところを描いている筈である。

三浦友和がドキュメンタリーみたいにしたいといっているが、
それは正解だと思う。
この映画は気持ちを自己主張してしまったら台無しになってしまうだろう。
だからといって完全なるドキュメンタリーでは情緒がなくなってしまう。

いや見直しました。監督。
この映画は実はものすごくレベルが高い映画ということに
皆さん気付いて欲しいと思う。

平たく言うと素敵なフランス映画なのである。
フランスで放映するならタイトルはアイスクリームにしたらいい。
(フランス語でアイスクリームなんていうのかな・・・)

アシカラズ


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