⊂ サケブタ ⊂

両の手の細い指で
支えるように持って
ひねりを加えて
回転させる

昔は栓の部分のコルクを外し
サケブタ同士で縁を擦って
面子のようにひっくり返す遊びをしていた

昔というのはもう三十五年は前のことだ
今は殆どがプラスチックだから
その遊びは出来ない

五才の息子にその話しをしたが
興味なさそうにしている
そして
サケブタの底に頭の丸い画鋲を差して
もっと良く回る工夫している
昔はひっくり返されないように
コルクに水を吸わせて重くした

サケブタは実に良く回転する
でも自分は上手く回せない
息子はそれを見て少し優越を感じている

唐突に
ブタはどこにいるの？
、と聞かれる
ブタは蓋のことだからブタは何処にもいないよ
、と教える
ふーん
、といってニコニコしている
納得しているのだろうか？
もしかしたら
そのことでずっと悩んでいたのかもしれない

・・・それとは別に困ったなと思う
性格が自分に似ているような・・・
将来似たようなことで躓くのかもしれないと思う
教えたい気もする
十年後には理不尽を感じるよって
たまらなくセックスしたくなるよって
そこは右に・・・とか
その女は・・・やばい、とか

まぁいいかな

ベイブレードも
ベーゴマも
昔ながらの木のコマも
皆コマだ
時代が違うなと感慨深げにするのも
なんだか陳腐なような気がしている

サケブタが回っている
息子とそれを見ている

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