☆ 何かのシルシを ☆

たどり着いた海
ワタシは何も語らない

待ち続ける
ワタシがいて
待っているのに
時間だけは
待ってくれなかった
そんなことを
繰言のように語る波

はっきりと
記憶に残っている
場所も
時間も
名前も
感情も
でも静かに
沈殿しているだけ
記憶の底に
海の底に
不純物みたいに

なんて煩わしいシルシ
いとおしいシルシ
愛すべきシルシ
幻想なの?
現実なの?
混沌としている

海へ向かったあの日
魚になるかもしれない
貝になるかもしれない
別の生命になれるかもしれない
気の遠くなるような時間をかけて
綺麗に蘇えるかもしれない
そんな風に思っていた
でもただ苦しかった

誰かが海を見つめて
理由もなく
涙するかもしれない

いつか誰かが
ワタシのシルシを
身体のどこかで
感じるかもしれない

でもシルシは
もう一度
同じことを
同じ経験を
繰り返すだけかもしれない

人間なんてもう
いないかもしれないけどね

ワタシは何かになれるかしら?
未来へ過去へ


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